F1 Column 2005:U.S. GP

2005年アメリカGP特集

■アメリカGP3日間の経緯
6/17 (金)

・フリー走行2でゾンタとR.シューマッハのタイヤがバースト。ラルフはクラッシュ。
・ミシュランは応急措置としてチームにタイヤの内圧を上げるよう勧める。
この時はトヨタの車体側の問題とも思われていた。
・ミシュランは工場にタイヤを持ち帰るも原因の特定はできず。

6/18 (土)

・午前にトヨタがシケイン設置を提案する。トヨタはタイヤ側の問題と確信していた。
・ミシュランは10周以上の高速走行は危険と発表。フリー走行3-4でミシュラン勢は連続走行を避ける。
・トヨタはダウンフォースを下げ、燃料を軽くするなどタイヤに負担をかけないセッティングを行うが、それでもタイヤが破損した。
・トヨタはレースが正常に行われないと判断し、予選用セッティングでトゥルーリにPPを獲らせることを決断。
・午後になってマクラーレンとレッドブルのタイヤにも亀裂が見つかる。ミシュランタイヤ側の問題であることが確定的になる。
・夕方にはシケイン設置の声が高まってくる。
・ミシュランはスペインGPで使用した型のタイヤの空輸を計画。ところが対策タイヤでも持たないことが判明。

6/19 (日)

・フェラーリを除く9チームは朝からミーティングを行う。FIA代表のモズレーも電話で部分的に参加。
・9チームはシケイン設置をFIAに提案するが拒否される。
・FIAは代替案としてターン13手前に速度制限区域を設けることを提案。しかし現実的でないとしてチーム側が拒否。
・チーム側はシケインの設置がない限りレースに参加しないことで合意。
・ミシュランはパートナーチームをレースに出走させないことを表明。
・ジョーダンが造反。これを受けてミナルディもレース出走を決める。
・レースに出走しないことを決断したミシュラン勢だが、グリッドにはつく。誰かからの提案らしい。


遅すぎたミシュランの対応/FIAも譲歩していた
 ミシュランが持ち込んだタイヤでレース距離を走りきることはできない、これが明らかになったのはレース当日の早朝だ。その後シケインを設置しろと言うのはあまりにも馬鹿げている。

 シケインの形状はどうするか、練習走行なしでは危険ではないか、ならばパルクフェルメ規定は無しになるのか、ノンタイトル戦になってしまうのか、そもそも物理的に無理ではないか、もし事故がおきたら誰が責任を取るのか、など問題が多すぎた。FIAがシケイン設置を拒否するのは当然のことだ。そこでFIAはスピード制限を提案したわけだが、これは現実的でないとしてチーム側に拒否された。しかしシケイン案よりよっぽど希望があったはずだ。

 土曜朝の段階でタイヤの問題がわかっていればシケインもまだ現実的であったはずだ。しかし、ミシュランはタイヤ問題を認めず、トヨタの車体を疑っていた節がある。

見え隠れするストッダートの陰謀
 ミナルディとジョーダンはブリヂストンユーザーでありながら、ミシュラン勢と行動をともにすることに同意していた。これはおかしい。確かにどうせポイントはとれないからシケイン設置でノンタイトル戦になってもかまわないし、ミシュラン勢のみポイント除外ともなれば大もうけである。しかしボイコットしても何の利益もないし、そもそも合理的な理由が存在しない。
これには激化するFIA派と自動車メーカー連合との対立が影響していると考えるほかない。

 ミナルディはプライベーターながらメーカー連合に参加している。ストッダートはこの騒動において世間のFIA&フェラーリ批判を加速させようとした。9チームのミーティングはシケイン設置の方向で動いていた。もし実現すればノンタイトル戦となる。フェラーリはボイコットするだろう。そうなればフェラーリの孤立は進む。ところがシケイン設置はFIAに認められなかった。ストッダートにとっては想定内だった。むしろFIAが拒否したことはFIAを悪者に仕立て、さらにフェラーリを孤立させる上で都合が良かった。

 「ミシュランはシケインが設置されない限りレースには出走しない」

 FIA側筆頭のフェラーリはミーティングに参加していなし、レッドブルはミシュランユーザーだからレースには出られない。問題はジョーダンだが、これもボイコットに同意した。そして自分たちも同意すればレースに出るのはフェラーリの2台だけ、強硬な姿勢でレースを台無しにしたFIAとフェラーリは世界中から非難される。すべてが思い通りだった。

 ジョーダンの裏切りが発覚したのはレース開始直前。ガレージに不穏な動きありとの情報を得たウィリアムズが斥候を出したところ、なんとレース出走の準備をしているではないか。ストッダートの陰謀は潰えた。

 フォードの撤退とミッドランドの買収によって、ジョーダンはメーカー連合を離脱してFIA側についた。アメリカGP直前にトレーバー・カリーンが追い出され、現在チームの指揮を執っているのはF1の事情を知らないコリン・コレスだ。チームミーティングには呼ばれたから参加したまでだろう。FIAを敵に回すつもりは全くないし、まだ来期のエンジンは確定していないから、フェラーリとの関係悪化も危険である。しかも自分はBSユーザーだからレースに出ることに支障はない。そんな中ミシュラン勢がボイコットを決めたことで、3位表彰台の可能性が生まれた。これを逃す手はない。事実裏切りを非難する者は“ミナルディをのぞいて”皆無である。そもそもジョーダンは話し合いに参加はしたが同意はしていないとも言う。

▼ポール・ストッダートの声明
まず初めに、インディアナポリスに集まってくれたファ ンや世界中のレース観戦者に、今日の午後の“茶番”について心から謝りた い。F1が政治に関与されない、歴としたスポーツであることを証明する必要 があったが、あいにくそうはならなかった。レース前、参戦10チームのうち9チームが安全性を懸念して、最終コーナーの手前に臨時のシケインを設ける ことを提案し、それができないのならレースに出場しないという方針で合意に達した。

しかし、このアイデアはFIA会長のマックス・モズレーによって却下されて しまった。単刀直入に言うと、レースは中止すると言われたんだ。考えよう によっては、そうなるべきだったかもしれないね。だが中止は、このスポー ツやアメリカ国民、そして世界中のF1ファンにとっては明らかに最善策では ないというのが私の見解だった

ミシュランタイヤを使用しているチームには心から同情し、レースを終えても満足も喜びもない。だいいち今日の午後の出来事はレースと呼べるのだ ろうか?ちなみに誤解のないように説明すると、我々はジョーダンが今朝 の決定を覆し、レースに出場することが明らかになったため、参戦を決めた。

私は愛すべきこのスポーツが政治によって破壊されないよう、今日の出来事が価値のある教訓になればいいと心から望んでいる。アメリカGPが通常通 り行われるための解決策もあったのに、それはFIAから認められず、自分たちとは無関係だと判断したフェラーリからも支持を得られなかった。

 ミナルディはレース後のリリースでもミシュランを非難することをせず、FIA、フェラーリ、さらにはジョーダンを悪者にしようとした。さらに数日後にはマックス・モズレーの辞任を要求するアピールを行った。これは悪あがきにすぎなかった。ストッダートはさらなるボイコットを示唆しているがこれも大きな流れとはなっていない。

 危険なタイヤを持ち込んだミシュランが非難されることは当然であるが、これを利用しようとしているストッダートはそれ以上に非難されるべきだ。ミシュランをF1から追放するのであれば、ストッダートも追放されるべきである。


 ■2005年アメリカGP特集
F1 Columun 2005:U.S. GP